不快に感じる領域

満員電車は多くの人が不快に感じるものだし、説明不要と思うかもしれませんが、人間の心理的な観点から「どのような心理が働いていて、不快に感じるのか」というのは、説明が難しいと思います。

「狭い」「手が当たる」「体臭が気になる」などの具体的な理由や被害がなかったとしても、隣に人がいると不快に感じる人は多いです。

例えばですが、

ガラガラの電車内に座っていたら、後から乗ってきた人が隣に座った。

この場合、あなたはどう感じますか?恐らくこう思うはずです。

他にも席はあるのに…他のところに座って距離を取って欲しい

こう思うのではないでしょうか?何か被害があるわけでもないのに、居心地の悪さを感じてしまうのです。

心理学ではこれを「パーソナルスペース」という言葉で解釈します。

今となってはよく聞く言葉になりましたね。これは人が持っている、他人に侵入されると不快なエリアのことで、関係性が濃い場合は狭く、薄い場合は広くなります。

恋人とは抱き合うことができますが、知らないおじさんであれば密着するどころか触れることにも精神的ストレスを感じてしまうはずです。

パーソナルスペース(英: personal-space)とは、他人に近付かれると不快に感じる空間のことで、パーソナルエリア個体距離対人距離とも呼ばれる。一般に女性よりも男性の方がこの空間は広いとされているが、社会文化や民族、個人の性格やその相手によっても差がある。これはプロクセミックス(proxemics, 近接学)の分野である。一般に、親密な相手ほどパーソナルスペースは狭く(ある程度近付いても不快さを感じない)、逆に敵視している相手に対しては広い。相手によっては(ストーカー等)距離に関わらず視認できるだけで不快に感じるケースもある。

ウィキペディア参照

満員電車で感じるストレスもパーソナルスペースが大きく侵されているからと言えますね。

ストレスを感じると他人を思いやる余裕がなくなっていきます。そうなると自分勝手な行動をとりやすくなるので、それが直接的な被害という形で出てくきます。

そうなると、パーソナルスペースを侵されている以外の不満要素にも繋がります。そこも満員電車が嫌われる大きな理由の一つですね。

パーソナルスペースを侵される→ストレスがたまる→他人を思いやる余裕がなくなる→自己中な行動が増える→直接的な被害が増える

「ストレスが溜まっているのはみんな一緒」という考えを全員出来れば、パーソナルスペースのストレスだけで済むんですけどね…

パーソナルスペースの種類

私達は日常生活の中で、大きく分けて4種類の距離感を持っています。仕事やプライベートで別れていて、わかりやすく言ってしまえば、親密な関係性の相手ほど距離感は近くなっていきます。

「45㎝」-親密な人との密接距離

・「近接相」

「0~15㎝」 視線を合わせたり、においや体温を感じたりすることができます。一番密接な関係が許される距離感ですね。自分に置き換えて考えた時、かなり限られた人しかいないと思います。

どんなに仲の良い友人であっても、この距離は許されることが少ないので、特別な相手である場合が多いですね。

・「遠方相」

「15~45㎝」 手が届く距離で、親しい人同士なら不快にならいない距離です。親しい人の多くはこの距離に分類されると思います。この距離はまだ、親しい人でなければ多くの人がストレスを感じてしまう距離です。

「120㎝」-相手の表情が読み取れる個体距離

・「近接相」

「45~75㎝」 どちらかが手や足を伸ばせば身体に触れることが出来る距離です。日常生活で最低限意識して保たれる距離感です。

・「遠方相」

「75~120㎝」 両者が手を伸ばせば指先が触れ合う距離です。 普通に会話が可能な距離感です。

「360㎝」-ビジネスに適した社会距離

・「近接相」

「120~210㎝」 相手に触れることが出来ず、微妙な表情の変化を見る事が難しくなる距離です。会社などで客に対応するときなどの距離感です。

・「遠方相」

「210~360㎝」 公式な商談や面会はこのくらいの距離感を取ります。

「750㎝」-個人的な関係が希薄な公衆距離

・「近接相」

「360~750㎝」 相手の様子を判別できない、個人的な関係が成立しない距離。

・「遠方相」

「750㎝以上」 言葉の細かいニュアンスが伝わりにくく、身振りなどが主体になります。

パーソナルスペースの男女の違い

パーソナルスペースには男女で違いがあります。男性の方がパーソナルスペースが広く、女性の方が狭い傾向にあります。

パーソナルスペースが狭いと、人との距離感を広げなく済み、パーソナルスペースが広いと、より、人との距離感を広げる必要がでてくるので、意外なことにも女性の方が近くてもストレスを感じないことが多いのです。

男性より女性の方がストレスを感じそうでそうけどね、割と男性の方が気にする人が多いという結果になっています。

男性に多く見られる行動として、「腕を組む」「脚を組む」といった行動も、パーソナルスペースを取ろうとしている心理の表れと言われています。

長時間にわたって狭い空間に押し込まれると攻撃性が増す、ということもわかっています。映画とか狭い空間に追いやられて言い争いになるシーンって割と現実的な心理描写だったんですね(笑)

女性が男性よりパーソナルスペースが狭い理由としては、周囲にいる人との協調性を保とうとするからです。

昔から女性は男性より集団行動をする時間帯が長いと言われていますからね、男性が食料を調達している間、残っている女性陣は協力して家事をし、集団の中で会話をしている時間も長いです。そう考えるとパーソナルスペースに違いがでるのも当然です。

バーゲン会場やデートスポットなどの、人との距離感が近い人込みでも女性が平気そうであったり、楽しそうに振舞えるのは、女性同士の間でも協調性が働いている可能性もありますね。

パーソナルスペースを利用して親密度を上げる

握手で上げる好感度

皆さん握手をすると好感度が上がりやすい、という事を知っていますか?

パーソナルスペースを警戒されることなく侵すことができるので相手との距離を縮めやすいです。少し悪い言い方ですが(笑)物理的距離感と心の距離は連動しやすいのです。

選挙前に候補者が街に立って市民と握手を行うのを見たことがあるでしょうか。

実は握手をした場合と演説をただ見ただけの時の感じ方を比較すると、握手をした時の方がその候補者が好意的に受け止められるようになることが分かっています。

とりあえずやってるだけかと思ってしまいますよね(笑)ちゃんと目論見が合ってやっているのです。

物理的に距離を縮めると親密になれる

見知っている相手に対しては、距離を縮めることで親密になれることがあります。

上記でも言いましたが、物理的な距離感と心の距離感は連動しやすいからです。今まで意識していなかった異性が、距離が近くなったことで意識し始める場合もあります。

勿論、逆に警戒されてしまう可能性もあります。今まで説明している通り、パーソナルスペースは相手との親密度で変わるので、それを侵してきたのならふつう通りに警戒されます。

相手にその気が無ければ、ひたすら不快に思われてしまう危険性もあるので、相手の反応を見間違えないようにしましょう。

パーソナルスペースを侵した実験

図書館の大きなテーブルで、一人で勉強している女子大生のすぐ隣の席に座る実験が行われた

隣に座っている相手に対して以下のような対応がされました。

・ひじを立て、腕で顔を抱える
・相手を視界から遮る
・相手に背を向ける
・自分の荷物を間に置いて、小海戦に柵をつくる

30分以内に「70%」の女子大生が席を立つという結果になりました。

この実験から人は無意識にでも、なるべく他人との距離を保とうとすることがわかります。

人と良い信頼関係を築いたり、関係性を知りたい、と考えている場合はその人とのパーソナルスペースに注目してみると良いかもしれませんね。

満員電車を不快に感じる科学的な理由、パーソナルスペースを理解すれば親密度を上げれる