褒めて伸ばすといい子に育つ?

自分の子供が何か成し遂げた時、あなたは子供にどんな反応をするようにしていますか?恐らく大概の人は子供を目いっぱい褒めることでしょう。

「子供には自信を付けさせるべき」「成功体験は次につながる」「厳しめな発言は控える」と考えるのが今の一般的な教育論に近いです。

子育てに関する記事・豆知識・指導書などでも、子供は褒めて伸ばすのが最良の方法だと言われています。

この記事タイトルでこの始まりだと「褒めて伸ばすのは間違い!」なんて言いそうな流れですがそんなことはありません(笑)

子供に対して、「とてもいい子だ」「偉いね」「頑張ったね」とちゃんと褒めて育てられた子供は本当に良い子に育ちやすくなるでしょう。

ただただ厳しい、何があっても簡単には褒めない、なんて環境で育てられると、向上心の無い無気力な人になってしまう可能性もあるかもしれません。

そうなってほしくない、成功体験で自分に自信身に着けて欲しい、そう思いつつ子供の未来を考えながら良い子に育って欲しいと願い、親は子供を褒めるものです。

しかし、この「褒めて伸ばす」が全く期待していない形で子供に影響を与えることがとある実験で発覚しています。

しかもこの影響は子供だけでなく大人の場合でも影響することもあります。

再度言いますが褒めて伸ばすことは悪い事ではないです。しかし、「間違った褒め方」をしてしまうと、最悪の場合だと「褒めない方がまだマシ」と考えかねないほどの悪影響が出てしまうことがあるのです。

なので今回は、「褒めることで出る複数の悪影響」と「デメリットの少ない良い褒め方」を解説していきます。

読む前の注意として、「教育」に絶対はないです。環境・状況・パターンなどなどいろいろな要素で答えは大きく変わります。

この記事はあくまで心理学的な見方した際の一つの考え方として見てください。

失敗を恐れる原因

怖がる子供 泣く子供

まずは褒めることのデメリットを考えた時に簡単に思いつく原因が期待感・プレッシャーによるものですよね。

1990年代の終わりに、コロンビア大学のクラウディア・ミューラーとキャロル・ドゥエックの二人により、「褒めて伸ばす」が本当に効果的なものかを調べる実験が行われました。

この実験により、「とても賢いね」「他の子とは違う」「才能がある」と言った褒め方をした際に、今の教育論を裏切るかのような結果が出てしまったのです。

◆実験内容
人種も社会経済的な背景も違う10歳~12歳までの子供達を400人以上集め、3つのグループに分けて知能テストを行う。

テストの内容としては、頭を使いさえすればできるパズルとなっている。解答を集めて採点を行ってもあえてテストの結果は伏せ、一人一人にとても優秀で80%正解できていると伝える

・第一グループ
他グループと違い、沢山のパズルが解けたのは本当に凄いことで、頭のいい証拠だと話す

・第二グループ
結果以外は伝えない

・第三グループ
「別項目にて結果を紹介」

「第一グループ」のグループが「褒めて伸ばす」の対象になった子供と考えてよいでしょう。

良い結果を期待できる第一グループですが、結果は下記のような三つの大きなマイナス要素が働いてしまいました。

困難を避ける

続けての実験で今度は二つのテストを子供達に選択させました。1つは「難しいがやりがいがあり学びのある問題」もう一つは「優しく簡単だが学びは少ない問題」となっています。

褒められて自信が付き、期待されていると感じている子供たちは「難しいがやりがいがあり学びのある問題」を選択すると思いきや、結果は逆のものとなりました。

頭が良いと褒められた第一グループの子供達の「約65%」が簡単な課題を選ぶ、という結果になったのです。

それに対して、褒められなかった子供で簡単な方を選んだのは「45%」だったそうです。

褒められた子供は、困難を避け簡単な方を選ぶ傾向が強い、という結果になったのです。将来のことを考える親としては、かなり避けたい状態ですよね。

やる気の低下

さらに続けて行った実験にて、子供たちには難しいレベルのパズルを出題しました。

もちろん結果は、大半の子供達があまり良くないものなっています。テストの後に子供達にパズルの感想を聞き、「家に持ち帰って続きをやる気があるか?」という内容の質問がされました。

ここでグループの間に大きな違いが表れ、頭が良いと褒められている第一グループは、難しいパズルを楽しむことができずに、家でやろうとする子が少なかったそうです。

成績の低下

最後のテストにて、褒めて伸ばすの方針をさらに裏切る結果が出てしまいました。

テストのレベルとしては、最初にやったパズルと同レベルのものです。しかし、成績は大きく開きがでるものとなりました。

結果は、頭がよいと褒められた第一グループの点数が、何も言われなかった子供達よりもはるかに点数が低かったのです。

モチベーションへの影響に関しては、まぁ考えられるし納得もしやすいですが、まさか成績が下がるとは思いませんよね。

最悪の形で起きる能力の認知

褒めて成績まで下がってしまう程の悪影響がでるとなれば、迂闊に褒めることもできなくなるでしょう。この結果に対してのミューラーとドゥエックの考えとしては、複数の要素が絡んでいると考えています。

褒められると子供の気分は良くなりますが、同時に失敗を恐れるようになるのです。頭が良いと思われていることが枷となり、失敗してしまう確率の高い難しい問題への挑戦を避けるようになるのです。

さらに、能力が高いと評価されると「努力しなくても自分はできる子」と思いがちです。そうなると必要な努力を怠りがちになるでしょう。

そうやって努力を行った結果、失敗や挫折が増えていきます。そこで子供は最悪の形で「自分には能力が無い」と認知してしまうのです。

そうなれば完全にやる気を失います。無気力感に苛まれ、自分には能力が無い、やっても意味が無い、と思い込んでしまうのです。

大袈裟な感じに聞こえるかもしれませんが、自分の子供の頃を思い出してみて欲しいです。子供ってよく拗ねちゃうますよね。自分もそうだったはずです。

あの状態が、やる気を失い、無気力感に苛まれている状態と何ら変わりないのです。一言で感情が一点するような些細なことに感じるかもしれませんが、それは子供に対する言葉の影響力の大きさを表しているのです。

そうなれば自信をつけるために褒めたことは無意味と化し、逆にマイナスな要素にしかならなかったという結果になってしまいます。

因みに、第二グループの子供が成績を偽った割合が約「10%」だったのに対し、第一グループの褒められた子供の「40%」が成績を偽ったそうです。

やる気をなくし、能力が下がり、結果を偽るようになった。

これは最悪の結果と言っていいでしょう。信憑性を疑いたくなるような結果となりましたが、この実験は他のいくつかの年齢でも実施され同様の結果になったことが確認されています。

褒めるのは努力

子供を褒める親 見つめ合う親子

上記を読んで頂いた方は「褒めない方がいいの!?」となると思います。最初の項目でも何度か言わせていただきましたが、もちろん褒めることは悪い事ではないです。

重要なのは「子供の頑張りを褒める」ことなのです。

上記の「実験内容」にて、「第三のグループ」に関しての内容を記載していなかったのでここで紹介させて頂きます。

・第三グループ
「頑張ったね」「一生懸命やったね」などの「頑張り」が褒められた

第三のグループは能力や才能などを褒めるというより、その子が頑張った事、意識したこと、どのように対処したのか、ということを褒めるようにしたのです。

やる気と成績の向上

さきの実験で行われた「難しくやりがいのある問題」又は「優しく簡単な問題」を選ぶ実験にて、第三グループは「10%」しか、「優しく簡単な問題」を選びませんでした。

努力を褒められた子供は積極性に溢れており、難しい問題にも挑戦する傾向が強かったのです。

上手くいかなくても家で続きをやろうとする割合も高く、折れづらく自主性もあるという、第一グループとは同じ褒めるという行為でも大きな違いが生まれたのです。

さらに、実験の最後に行ったテストでも、第三グループの子供は、最初にやった時よりも沢山の問題を解くという結果になりました。

失敗の原因が「能力」によるものではなく「努力」によるものだと考えやすくなるため、失敗からくる虚無感が軽減されるそうです。

これはまさしく私達が期待する理想の「褒めて伸ばす」から得られる効果なのではないでしょうか。褒める箇所が違うだけでこうも結果は変わるのです。

効果のある褒め方

この記事の纏めとなりますが、親は子供の「才能」や「能力」などを褒めるのではなく、「努力」「過程」「考えたこと」「頑張り方」などを褒めると良いということです。

ついつい「君は賢いね!」「こんなに早いなんて才能がある!」「天才かも!」なんて褒めてしまいますよね。一切の悪気もなく、気分良くなってもらいたい気持ちで言ってしまいます。

しかし、親や周りの大人からの一言で子供の思考は大きく変わります。それは良い方にも悪い方にもです。

思い出してみてください。自分が子供の頃に何気なく言われた言葉は頭に残り続けてますよね。鵜呑みにし、思い込み、行動を大きく変えます。

それを意識すれば、子供の能力を最大に生かす褒め方もあれば、子供の成長を妨げる褒め方があるのも納得しやすいはずです。

困難に立ち向かえること、努力を惜しまないこと、この二つを意識して子供の頑張りをちゃんと見てあげることが重要と考えればいいかもしれませんね。

子供との会話

褒めるのって少し面倒ですよね(笑)ついつい何も考えずに褒めてしまいます。しかしそれだと最適な褒め方は難しくなります。

説明している通り、成長を促す褒め方は「頑張り」を見てあげることです。その為に子供との「会話」が重要になります。

子供の頑張ったことを一番知っているのは子供本人です。そのためには子供の話を聞き、質問をちゃんとしてあげることが必要になります。

「どんな風にやったの?」「どこで困った?」「どんな作戦だったの?」「楽しかったところは?」

意識するポイントとしては、より具体的だといいですね。どうやったか振り返るキッカケにもなるので、経験値を多く得ることが可能でしょう。

具体的に褒めると子供も「ちゃんと見てもらえてる」と感じやすいのも利点です。どんなことにも全力な子供に真摯に向き合うところから始めていきましょう。

「褒めて伸ばす」の間違えた使い方、子育てをする上で知ってほしい褒めることのメリットデメリット